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京都地方裁判所 昭和50年(わ)198号 判決 1976年10月07日

主文

被告人を懲役二年八月に処する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、

第一  暴力団山口組系川崎組内三好組組長であるが、

(一)  昭和四九年一二月一六日ころ中出照次(当時二五歳)からキツクボクシング試合観覧入場券の売捌きの依頼を受けるとともに、同試合開催の興業主である山本善彦に対する同興業出資金回収の相談に与つたが、右前売券入手に至るまでの事情や右中出の右山本に対する出資金について疑義があつたうえ、右中出より、右山本が暴力団山口組系山健組とつながりがあり、右入場券の前売りに関して被告人が介入したことを快く思つていないことを聞き知つたので、同月一七日直接右山本に対して右のような疑義を質して右中出の言うことが真実であるかどうか確かめたうえ、入場券の販売および貸金の処理について話合いをしようと決意したが、その際右山本において被告人を快く思つていないうえ、もし右話し合いがもの分れに至つた場合には、同人が暴力団員であるから同人ら組員と喧嘩になることも予想されたので、その場合に同人らに対抗して戦うことも辞さないと考えて輩下の服部幸三、谷口真康にその旨告げて、ここに共同して、右山本の生命身体に危害を加える目的をもつて、同日午後一一時ころ、京都市中京区西堀川通御池下る西三坊堀川町五二一番地京都市中京消防署前路上に改造けん銃一丁、菜切り庖丁一本、長さ約一メートルの鉄棒一本を所持して集合し

(二)  前記中出が前記のとおり、かねて被告人らに対して入場券の売捌きおよび出資金回収の件につき、依頼しながら、曖昧な態度をとつていたが、そのうえ前記日時に、前記場所に出向かなかつたために立腹し、前記服部および谷口と共謀のうえ、同月一八日午後八時ころから約二時間に亘り、京都市東山区新橋通大和大路東入る三丁目林下町四四一番地の五六佳山ガレージ事務所において、右中出を難詰し、こもごも同人の腹部、背中などを足蹴りにし、手拳で殴打し、被告人において鉄製の灰皿を同人の頭部に投げつけるなどの暴行を加え、よつて同人に対して安静加療約一箇月間を要する左第一〇骨骨折、全身打撲症の傷害を負わせ

(三)  同日午後一〇時ころ、右同所において右服部および谷口と共謀のうえ、前記暴行により畏怖している右中出を普通乗用自動車の後部トランクに入らせて、トランクカバーを閉めて同人を中に閉じ込め、右谷口において右同所から東大路通を北行し、東大路三条において三条通を西進し、花見小路三条にて花見小路通を南進し、新門前通に至るや東進し再び東大路通を経て同所に至るまでの約一・三キロメートルの間右自動車を疾走させ、よつて同人が脱出することを不能ならしめて同人を不法に監禁し

第二  昭和四九年一二月二四日午前二時前頃前記佳山ガレージ事務所において、前記服部および谷口から、宮田文夫(当時二六歳)の友人が被告人ら使用の普通乗用自動車(外車)を蹴つたことを聞き、ここに右両名と共謀のうえ、右宮田に因縁をつけて右自動車には何ら損傷がないにも拘らず弁償の名目で金員を喝取しようと企て、右服部および谷口において「おまえなめてんのか。鼻でもへし折つてやろうか」と言い、右谷口において手拳で右宮田の顔面を一回殴打し、被告人において「外車の損害を弁償すると書け」などと申し向けて金員を要求し、もしその要求に応じなければいかなる危害を加えるかも知れない気勢を示して同人を畏怖させ、よつて同月三一日同市東山区今熊野本瓦町六六〇番地山哲石油今熊野給油所前路上において、同人から同人の父親宮田勇二を介して現金七万五〇〇〇円の交付を受けてこれを喝取し

第三  昭和五〇年二月二日午前一時四〇分頃同市同区古門前通大和大路東入る三吉町二丁目三三四番地スカイビル二階スナツク「ようこ」において、飲酒中些細なことに立腹し、前記服部らを呼び集め、ここに右服部、田村文男、崔和夫、永石かおると共謀して、松山国一(当時二一歳)、高山虎男(当時二三歳)、西田秀雄(当時二三歳)、慶本こと李昌修(当時二二歳)に対してこもごも同人らの身体各所を殴る蹴るなどの暴行を加え、よつて右松山に対し加療約二週間を要する左胸部打撲傷等の傷害を、右高山に対し加療約三日間を要する後頭部挫傷等の傷害を、右李に対し加療約二週間を要する頭部打撲症兼挫傷等の傷害をそれぞれ負わせ

第四  韓国に国籍を有する外国人であつて、昭和四六年一〇月一八日外国人登録の確認を受け、京都市東山区今熊野椥ノ森町七番地に居住していたものであるが、右確認を受けた日から三年を経過する昭和四九年一〇月一八日前三〇日以内に右居住地を所轄する東山区長に対し、登録原票の記載事項が事実に合つているかどうかの確認を申請しなければならないのに同年一二月一一日まで右確認申請をしないまま本邦に在留し

たものである。

(証拠の標目)(省略)

(法令の適用)

被告人の判示第一(一)の所為は、刑法二〇八条の二、一項、罰金等臨時措置法三条一項一号に、同第一(二)および第三の各所為は、いずれも刑法六〇条、二〇四条、罰金等臨時措置法三条一項一号に、同第一(三)の所為は、刑法六〇条、二二〇条一項に、同第二の所為は、同法六〇条、二四九条一項に、同第四の所為は外国人登録法一八条一項一号、一一条一項に、それぞれ該当し、判示第一(一)、(二)、第三、第四の各罪については所定刑中いずれも懲役刑を選択するが、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第一(二)の罪の刑(ただし、短期は判示第一(三)の罪の刑による。)に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役二年八月に処することとし、訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文により全部これを被告人に負担させることとする。

よつて、主文のとおり判決する。

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